ターゲット値を算出して、薬剤の有効性を確認すべき

PK/PD理論に基づく効果的な抗菌薬の投与法を考えるときに、必ず関係してくるのはMIC(最小発育阻止濃度)である。そのため、抗菌薬の投与法の工夫をするときには、その感染性の原因菌に対する選択された抗菌薬の薬剤感受性を確認することが重要である。ターゲット値を算出することによって、薬剤の有効性を確認できる。以下の文章はターゲット値と薬剤の有効性を確認することについてを説明する。

個々の症例において、感染性の原因菌が培養検査から検出され、その原因菌に対して、治療のために選択した抗菌薬の薬剤感受性すなわちMICが測定され、その値を使ってPK/PDバラメーターくを算出することができれば、理想的ではあるが、実際には原因菌は不明のことも多く、また個別に検査結果から導かれる数値がすべての症例で適しているとはいいがたい。

抗菌薬の体内動態である血中濃度は年齢や代謝酵素の有無などによって、若干の個人差はあるが、あまり大きな違いがあり、また同じ菌種でみ感受性菌と耐性菌ではその値に大きな差がある。そのため、ある抗菌薬が、ある原因菌の感染症に有効であるは否かを確認するには、一般的に90%の原因菌が含まれる最小のMIC(MIC90)の値を持って算出される。

このPK/PDバラメーターはすべて計算式であるために、答えを算出することが可能であり、その答えがこの抗菌薬が臨床的に要綱であるかどうかを判断する目安となる。この目安をターゲット値と呼びM、この値より大きくなれば臨床効果が得られる用法・用量と考えられる。たとえば、TAMに関係するペニシリン系薬であれば、選択した薬剤の原因菌に対するMIC90の値以上の血中濃度を維持できる時間の総計が、その薬剤が血中に存在する時間で割った値が30%以上であるときは、宿主の免疫が正常で、軽症から中等症の感染の治療に対して、選択した抗菌薬の用法・用量で十分な効果が期待でき、さらに50%以上であった場合は、免疫不全患者や重症の感染症でも十分な効果が期待できる目安と考えられる。

以下は、β-ラクタム系薬を例として、説明する。
ペニシリン系薬
ターゲット値:増殖抑制作用≧30% 最大殺菌作用≧50%
セフェム系薬
ターゲット値:増殖抑制作用≧40% 最大殺菌作用≧60~70%
カルバペンネム系薬
ターゲット値:増殖抑制作用≧20~30% 最大殺菌作用≧40~50%

✳増殖抑制作用の場合は軽症から中等症の治療、最大殺菌作用は免疫不全患者や、重症の感染症への治療時のターゲット値となります。では、このPK/PDパラメーターの算出ができる状況であれば、非常に有効な抗菌薬の選択が可能になるということです。